2023年11月2日、道内主要書店で発売!

 

世界港湾史
世界の港と水運ネットワークの発達史

関口信一郎/著

定価3,960円(本体3,600円+税10%)
A5判並製
288ページ
ISBN 978-4-906740-60-4 C0020

海上交易と港湾の発展を世界史から俯瞰する初の通史!

《世界の主要港が有する地理的条件や経営戦略から、独自の発展を遂げた変遷を一望できる好個の著作として本書を推薦します――北海道大学名誉教授・佐伯浩》。
古代メソポタミアから人類の経済活動を支えてきた海上交易と港の発展史を、世界的スケールでわかりやすく繙く初の通史が誕生。ヴェネチア、上海、アムステルダム、ニューヨークなど世界の主要港が、それぞれの地理的条件や経営戦略のもとでどのように発展を遂げたかを、世界史全体から俯瞰する。あわせて、日本近代土木工学が世界の交通ネットワークで果たした役割を明らかにし、廣井工学を港湾史に位置づけた〈廣井勇評伝〉の完結作ともなる、前著『北海道みなとまちの歴史』に続く“港湾史シリーズ”第2弾!

誌面

豊富な図版を使って世界各地の代表的な港湾の変遷を解説

〈第3章 古代から明までの中国〉より


〈第7章 近代港湾の成立〉より

〈第7章 近代港湾の成立〉より

〈第10章 アングロアメリカ〉より

目次

地図◇本書に掲載した世界の主要な港と海洋運河

【序 章◇海上交通と港湾の概要】
海上交通/港湾と後背地/自然環境と港湾

【第1章◇古代オリエントと地中海世界】
古代メソポタミア文明/アレクサンドリア港/古代エジプト文明/古代エーゲ海文明/古代ギリシャ文明とピレウスの港/フェニキア最大の植民都市国家カルタゴ/ローマ帝国のオスティア港

【第2章◇インド洋海域世界】
古代インド文明と交易/インド洋のモンスーンと航海/世紀以降のインド洋海域世界

【第3章◇古代から明までの中国】
文明誕生から漢まで/魏晋南北朝から隋唐まで/海の帝国として栄えた宋/世界帝国を築いた元/明の大運河と海上交易

【第4章◇イスラーム世界】
平安の都バグダード/インド洋の国際交易港スィーラーフ/マムルーク朝によるイタリア諸都市の進出防止策

【第5章◇地中海世界の復活】
地中海の地理/ビザンツ帝国とイタリア諸港/イスタンブール/ヴェネチア/ジェノバ/マルセイユ

【第6章◇北西ヨーロッパの躍進】
ハンザから大航海時代まで/アントウェルペン(現アントワープ)/アムステルダム

【第7章◇近代港湾の成立】
概説/ロンドン/リバプールとマンチェスター〈ⅰリバプール、ⅱマンチェスター〉/ロッテルダム/ハンブルク/海洋運河〈ⅰスエズ運河、ⅱパナマ運河、ⅲキール運河(北海・バルト海運河)

【第8章◇近代のインド洋海域世界】
ヨーロッパ諸国のインド洋進出/スエズ運河開通前のインド洋航路/シンガポール/カルカッタ(現コルカタ)/ボンベイ(現ムンバイ)/カラチ/モンバサ

【第9章◇近代の中国】
概説/ロシアのシベリア開発と中国東北部〈ⅰロシアの領土拡大とシベリア開発、ⅱシベリア横断鉄道の建設と中国東北部〉/上海/大連

【第10章◇アングロアメリカ】
概説/モントリオール/ニューヨーク/フィラデルフィア/ボルチモア/ニューオーリンズ/ヒューストン/サンフランシスコとバンクーバー/コラム*アメリカで今も生きる自然主義の技術力─岡﨑文𠮷

参考文献/索引

「はしがき」より

本書は、世界における海上交易の発展の歴史に沿って、その主要な舞台となった港に焦点をあて、地理的にも歴史的にも異なる世界の港を、古代メソポタミアから20世紀中葉までの時間軸で俯瞰的に描くことを目的に執筆した。そのため、世界の海上交易の主要幹線上に位置しなかった、南アメリカ、オセアニアの諸港は取り上げていない。
また、執筆にあたっては廣井勇博士の著書『築港』に倣い、各国の港湾政策から個別の施設まで幅広くとりあげた。この名著は、明治・大正期を代表するシビルエンジニア(土木工学者)である廣井勇博士が、その蘊蓄と情熱を傾けて生涯に4度改訂を行った、当時の世界最高水準の港湾工学書である。その記述内容は世界諸港の事例を数多く引きながら、近代の港における政策や管理、施設設計から河口改良、海洋運河まで広範な範囲におよぶ。本書には、その工学書を歴史物語に翻訳することで、一般の読者にも親しんでいただきたいという筆者の願いが込められている。
その執筆方針に基づき、本書のもう一つの目的である、日本の土木技術が世界の海上輸送や港湾の近代化にいかに貢献したかを明らかにすることができると考えた。その事例として、我が国に近代築港の科学と技術を移植し発展させた廣井勇博士の直弟子である岡﨑文𠮷、内田富吉、青山士の業績を取り上げることにより、近代化が遅れた我が国の土木技術が驚くほど短期間のうちに世界的な水準に到達し、世界の海上交通の発展に貢献したことをつまびらかにした。それは同時に、世界の港湾史における廣井工学の位置づけともなっている。

著者プロフィール

関口信一郎(せきぐち・しんいちろう)
1950年岩手県生まれ。76年北海道大学大学院工学研究科修了、北海道開発庁(現国土交通省)入庁。旧運輸省(現国土交通省)港湾技術研究所、水産庁漁港部、北海道開発局等に勤務。稚内マリンタウンプロジェクト計画の策定、新構造防波堤としてプレキャスト・フォーム・ケーソン、斜面スリットケーソンの開発を主導し、苫小牧港、那覇港、下田港などで採用。明治・大正期を代表する土木工学者廣井勇博士が設計・監督した函館漁港舟入澗防波堤および小樽港北防波堤の調査・修復、『廣井勇工学博士著作集』(寒地港湾空港技術研究センター、2023)の編集に携わる。北海学園大学大学院非常勤講師を経て、現在は萩原建設工業株式会社特別顧問。2001年工学博士。著書に『シビルエンジニア廣井勇の人と業績』(北海学園北東アジア研究交流センター、2015)、『北海道みなとまちの歴史―廣井勇が育んだ北の日本近代築港』(亜璃西社、2021)などがある。