北海道洋楽の歩みを丹念に辿る著者渾身のノンフィクション大作

 

新装版 北海道音楽史

前川公美夫/著

本体5,000円+税
A5判並製
676ページ
ISBN 978-4-900541-40-5 C0073

 北海道において西洋(クラシック)音楽がどのように受け入れられ、この地に暮らす人々がどのようにかかわっていったかを丹念に辿る力作ノンフィクション。著者の自著である『北海道洋楽の歩み~ペリー来航から札響まで』(北海道新聞社、1989)を底本に、大幅増補改訂した著者渾身の大作です。
 北海道での洋楽は、全国的な音楽教育の中での位置付けに加え、幕末からの開港場だった函館、お雇い外国人の多かった札幌など、他の都府県に見られない受け入れられ方がありました。著者はこれまで知られていなかった事実を紹介するとともに、これまで事実とされてきた誤りを正すことにも重点を置いています。
 と同時に、西洋音楽に携わってきた北海道に暮らす人々の動きを記すことにも、多くの紙幅を割いているのが特徴です。それは、北海道における西洋音楽の歴史を切り開いてきた先人である、数々の演奏者たちへの著者の敬意の現われでもあるのです。

目次

【第1章 幕末】 洋楽来航/ロシアからの黒船/開国の前から/箱館戦争のラッパ
【第2章 明治】 函館の教会で/クラークの讃美歌/屯田兵のラッパ/軍楽隊来る/唱歌ハ当分之ヲ欠ク/メーソンの北海道旅行/専門家第1号になりそこねた男/音楽教育のいしずえ/セルギイの道内行脚/学校の音楽教育/学芸会始まる/各地に市中音楽会/運動会は華やかに/孤児院のミンストレル/巡回活動写真/都ぞ弥生/赤帽子の音楽隊/和洋混交の音楽会
【第3章 大正】 誠実の人/凾館にアポロ音楽会あり/無声映画の楽隊/道博と札幌音楽隊/時計台の鐘/日本一の道楽/レコード・コンサート始まる/北大に2つのオーケストラ/マンドリン合奏団の誕生/ハーモニカ熱/楽士のオーケストラ/広がるコーラス/来道した音楽家たち/楽器・楽譜の普及
【第4章 昭和・戦前】 ラジオ放送始まる/中島オーケストラと拓博管弦楽団/SMCオーケストラとホールアンサンブル/ピアノ・トリオとジャズ・バンド/対立続く北大オーケストラ/マンドリン盛んに/ハーモニカ全盛/ラッパ鼓隊の盛衰/無声映画からトーキーへ/来道した音楽家たち/新音楽連盟の輝き/札幌新交響楽団の誕生/各地のオーケストラ/吹奏楽に全道組織/合唱も盛んに/学校の音楽教育/東京に進出した道産子たち/レコード・コンサートは花盛り/札幌放送管弦楽団の発足
【第5章 昭和・戦後】 フィルハーモニーと札幌音楽院/放送管弦楽団と放送交響楽団/時代の落とし子-札幌青年管弦楽団/札幌芸術協会の発足/専門教育始まる/作曲・研究・出版活動起こる/再びの並立から統合へ―北大交響楽団/札幌オペラ研究会が盛んに/隆盛の一途―吹奏楽/万年青年たち―マンドリン/レベルは高く―ギター/生まれては消え―アマチュア・オーケストラ/新たな道を―ハーモニカ/広がる歌声―合唱/鑑賞団体の興隆/ホール建設ブーム/二期会とオペラ活動/音楽会相次ぐ/外来オーケストラ/音楽祭とセミナー/道産子音楽家の輩出/楽器別の団体も
【第6章 札響】 市民交響楽団として―プロ・アマ混成での誕生/荒谷時代の幕切れ/山岡時代はあったのか/ヨーロッパの響き―シュバルツを迎えて/レパートリーの拡大―岩城と尾高/秋山和慶と指揮者団-札響・その未来/札響の文化経済学(道新連載より)
【付表】 札響の出演料/札響に対する公費補助金/来道した外来オーケストラ一覧(1956~90) 【参考文献】 【主要事項索引】 【主要人名索引】

著者紹介

前川公美夫(まえかわ・くみお)
 1948年登別市生まれ、室蘭市育ち。1971年北海道大学工学部建築工学科卒業。北海道新聞社で文化部長、編集委員、道新ぶんぶんクラブ事務局長、出版委員などを務めて退職。2010年から(財)札幌市生涯学習振興財団理事長。著書に『有島武郎の札幌の家』(星座の会)、『北海道洋楽の歩み』(北海道新聞社)、『北海道音楽史』(1992年=私家版、1995年=大空社、2001年新装版=亜璃西社)、『響け「時計台の鐘」』(亜璃西社)、『頗る非常! 怪人活弁士・駒田好洋の巡業奇聞』(新潮社)がある。また、アマチュア室内オーケストラ「札幌シンフォニエッタ」と「テー・デュ・ノール木管五重奏団」でファゴット演奏を楽しむ。