《創立25周年記念出版》180枚の地図で探索する、札幌タイムトラベルの誘い。
地図の中の札幌
堀淳一/著
本体6,000円+税
A5判オールカラー上製本
400ページ
ISBN 978-4-906740-02-4 C0021
札幌市民のみならず、多くの地理・歴史愛好者に本書を座右に置いていただきたい。
―――地図研究家・今尾恵介氏
『地図の中の札幌』を推薦する
地図を用いて札幌の歴史を語る。その任に最もふさわしい人といえば、堀淳一さんが筆頭であろう。札幌にすでに80年近くお住まいで、旧制中学生の時には市内の自宅を実測して「堀」という図名の200分の1地形図を作成された。北海道大学物理学教授としてのお仕事の傍ら地図を長年にわたって研究し、やがて地図エッセイストを本業として今日に至っている。
その著作は約100冊にのぼり、日本だけでなく外国を含むさまざまな地図を守備範囲とし、土地の「風貌」を伝達する雄弁な道具としての地図の表現について的確に、時に厳しく批評を展開すると同時に、地図――特に地形図の多面的な奥深い楽しみ方を、多くの読者に提示してくれた。もちろん中学生の時に堀さんの本に出会った私も、その恩恵に与った一人である。
本書に掲載された札幌の地図は、明治初年の黎明期の貴重なものから、人口200万に手が届きそうな現在の地形図、そして土地条件図などまで多岐にわたり、千古斧を知らぬ扇状地に切り拓かれた計画都市の、近代の急激な変貌を手に取るようにたどることができる。札幌市民のみならず、多くの地理・歴史愛好者に本書を座右に置いていただきたい。
―――地図研究家・今尾恵介氏
●いまお・けいすけ…1959年、横浜生まれ。『地図で読む昭和の日本』(白水社)、『地名の社会学』(角川選書)、『住所と地名の大研究』(新潮選書)など著書多数。ベストセラー『日本鉄道旅行地図帳』(新潮社)シリーズの監修も務める。現在、(財)日本地図センター客員研究員、日本国際地図学会評議員。
目次
I 札幌の沿革略史
1 なぜ北海道の首府に、札幌の地が選ばれたのだろうか?
2 札幌本府から第一期札幌区まで
3 第一期札幌区から第二期札幌区を経て、札幌市まで
4 札幌市の膨張
▼I章では、明治初年からの札幌の沿革を、地図や地形図を使って簡略に紹介します
II 札幌市に吸収された旧町村
1 山鼻村
2 円山村・藻岩村・円山町
3 琴似村
4 手稲村
5 篠路村
6 雁来村
7 丘珠村
8 苗穂村
9 札幌村
10 白石村
11 月寒村
12 平岸村・豊平町
▼II章では、かつて札幌の周辺に存在した町や村について、新旧の地図の対比で紹介します
III 地図にみる札幌の鉄軌道系公共交通機関
1 鉄道
(i)函館本線 (ii)千歳線 (iii)札沼線(学園都市線) (iv) 定山渓鉄道
2 軌道
(i)札幌軌道 (ii)軽石軌道 (iii)札幌市街馬車軌道
(iv) 札幌郊外電気軌道 (v)定山渓森林鉄道 (vi)札幌市電
(vii)藻岩山ロープウェイ (viii)市営地下鉄
▼III章では、札幌の鉄軌道(国鉄や私鉄、市電など)の変遷を、新旧の地図の対比で紹介します
IV 地図にみる札幌の道路・街区・水路と水運
1 道路
2 街区(中心部)
3 街区(周辺部)
4 固有名をもつ道路
(i)元村街道(丘珠街道) (ii)石山通 (iii)東屯田通・西屯田通
(iv)行啓通 (v)狸小路 (vi)ミニ大通 (vii)裏参道
5 水路と水運
(i)創成川 (ii)花畔―銭函間の運河 (iii)新川
(iv)潰えた昭和期前半の築港・運河計画
▼IV章では、札幌の道路の変遷やかつて利用された水路について、地図を豊富に使って紹介します
V 札幌の風変わり地図――鳥瞰図、変わりもの地形図・市街図、特殊地図
1 鳥瞰図
(i)北海道石狩州札幌地形見取図 (ii)明治六年札幌市街之真景
(iii)石狩支庁管内鳥瞰図
(iv)支笏洞爺国立公園を背景とせる札幌市観光鳥瞰図
2 変わりダネ地形図・地勢図・市街図
(i)仮製版20万分1地勢図 (ii)暫定版20万分1地勢図・その1
(iii)暫定版20万分1地勢図・その2 (iv)5万分1地形図・試験図
(v)2万5千分1地形図「札幌中心部」
(vi)昭和11年特別大演習地図 (vii)カラーマップ札幌市
3 特殊目的の地形図・市街図(主題図)
(i)現存植生図/(ii)4万分1都市化過程図/
(iii)札幌市周辺地質図(主として地震災害対策についての地盤図)/
(iv)土地条件図/(v)都市機能図/(vi)札幌文化地図/(vii)札幌並木地図/
(viii)土地利用図/(ix)土地利用図・拡大新版/(x)地盤高図/
(xi)ククリなしの札幌市街観光案内図
▼V章では、札幌をテーマにした珍しいものや美しいものなど、さまざまなスタイルの地図を紹介します
まえがきより
筆者は歴史家でも郷土史家でもなく、一介の地図愛好者にすぎない。また元来が不精者である上、前身が文献渉猟の必要性の薄い理論物理屋だったことの後遺症が災いして、図書館通いや古書店あさりが大の苦手である。
というわけで、まっとうな札幌の歴史を書く能力も資格もない。それに、まっとうな歴史としてはすでに「札幌区史」、「札幌市史」ほか、それこそ歴史・郷土史の専門家の書かれた本がちゃんとあるのだから、今さら私の出る幕はないわけだ。
だとすれば、不得手なことを無理に頑張って中途半端で生半可な札幌史を書くよりもむしろ、開き直って私の地図好きと私的嗜好を生かして、私が地図から読み取った自分にとって興味の持てる札幌の諸相を、手もとにある資料からの情報を適宜加味しながら私流に盛付けたほうが、はるかにいい。
と考えて書いたのがこの本である。つまり「地図の中の、そして私の中の」札幌、というわけである。(後略)
著者プロフィール
堀淳一(ほり・じゅんいち)
1926年京都府に生まれ、1935年札幌に移住。北海道大学理学部卒業後、物性物理学・統計力学・数理物理学を専攻。理学博士。1980年まで同大学理学部教授。同年、人生二毛作に向けて大学を退職し、エッセイストに転向。1972年、『地図のたのしみ』(河出書房新社)で日本エッセイスト・クラブ賞を受賞。1960年代より地形図を手に全国の旧道、廃線跡、産業遺産などを歩く旅をスタート。地図と旅の愛好者の集まり「コンターサークルS」を主宰。現在も各地を精力的に歩き続ける。『地図を歩く』(河出書房新社)、『地図のワンダーランド』(小学館)、『地図で歩く古代から現代まで』(JTB)、『消えた街道・鉄道を歩く地図の旅』『にっぽん地図歩きの旅 古道、旧道、旧街道』(各講談社+α新書)、『忘れられた道 完』(北海道新聞社)、『サッポロこぼれある記―北の街の空のひろがり』(そしえて)、『エントロピーとは何か―でたらめの効用』(講談社ブルーバックス)、『スイス温泉紀行』(共著・作品社)など、地図・鉄道・旅行・物理学に関する著書多数。