2024年11月9日、全道主要書店で発売!

 

札幌クラシック建築 追想
――都市と建築 老眼遊記

越野 武/著

定価3,300円(本体3,000円+税10%)
A5判並製・オールカラー
240ページ
ISBN 978-4-906740-67-3 C0052

歴史を秘めた札幌レトロ建築への誘い

  • 明治初期、原野を切り開きつくられた開拓使の都市・札幌。その都市空間に花開いた、木造から石造へと発展する近代建築の魅力と歩みを、街の歴史と実体験を重ね合わせて振り返る〈建築エッセイ〉が誕生。
  • 札幌市時計台、豊平館、道庁赤れんが庁舎、清華亭、北海道大学モデルバーンなど、明治期から残る札幌の歴史的建造物を長年にわたり調査・研究してきた北海道大学名誉教授の著者。長年にわたり修復や復原に携わったその豊富な経験と知見から、それぞれの特徴や建築の見どころをエッセイスタイルでやわらかく紹介します。
  • さらに、歴史的経緯や街の発展との関係など、札幌の近代建築史を多様な視点から解説。身近でノスタルジックな歴史的建築へのまなざしを一変させる、札幌レトロ建築への誘い。

誌面


本文扉ページ

各章にはガイドマップを掲載

Ⅱ 札幌のまちと建築「3 豊平館、華の世界」

Ⅲ 北大の建築「2 札幌農学校第二農場」

Ⅲ 北大の建築「3 移転キャンパスの建築」

Ⅲ 北大の建築「4 大正から昭和へ」


Ⅳ 札幌の煉瓦・石造建築「1 赤煉瓦の時代」


Ⅳ 札幌の煉瓦・石造建築「1 赤煉瓦の時代」


Ⅳ 札幌の煉瓦・石造建築「2 赤煉瓦庁舎と復原改修工事」


Ⅳ 札幌の煉瓦・石造建築「2 赤煉瓦庁舎と復原改修工事」


Ⅳ 札幌の煉瓦・石造建築「4 旧札幌控訴院」


Ⅳ 札幌の煉瓦・石造建築「4 旧札幌控訴院」

Ⅴ エピローグ「1 札幌が誇る現代建築」

目次

Ⅰ プロローグ[北海道移住から建築の世界へ]
1 生い立ち
 鉄北から西郊琴似へ/琴似のこと/小中学校から高校まで
2 建築を選ぶ
 建築へのまなざし/学生時代/卒業のころ─建築史への入口/山下設計事務所時代/透視図雑考/初期洋風建築研究の視点/洋食の話/伊勢神宮/荷重を支えない柱

Ⅱ 札幌のまちと建築[開拓使の都市と建築]
1 札幌のまち
 理路整然/座標空間都市/碁盤目格子街路の外れ/街路幅の理由/南北軸か東西軸か
2 札幌の木造建築
 偕楽園と水木清華亭/清華亭の実測調査/内法寸法/旧開拓使工業局庁舎/旧永山武四郎邸/開拓使後の木造洋風建築
3 豊平館、華の世界
 大通にあったころ/まずは豊平館をご紹介/設計者・安達喜幸のこと/二つある建築仕様書/豊平館の設計とコンドルのスケッチ/練りあげられたデザイン/窓デザインの設計変更/豊平館の華〈その一 正面中心軸のデザイン〉/豊平館の華〈その二 外壁ペイントの色〉/豊平館の華〈その三 シャンデリア釣元メダイヨン〉

Ⅲ 北大の建築[生まれ育ったところ]
1 札幌農学校創設期の建築
 腰壁の話/札幌市時計台・札幌農学校演武場
2 札幌農学校第二農場
 第二農場の建築と船木幹也さん/家畜房の小屋組構造/軸組構造/附属農場の建築/穀物庫の構造/バルーンフレームあれこれ
3 移転キャンパスの建築
 札幌農学校の新キャンパス/建築家・中條精一郎
4 大正から昭和へ
 「様式主義」建築の理解/理学部と農学部本館/モダニズム建築/北大営繕課の建築家たち/転換期のキーマンだった岡田鴻記

Ⅳ 札幌の煉瓦・石造建築[明治中期以降の展開]
1 赤煉瓦の時代
 明治中期を代表する赤煉瓦建築/札幌麦酒醸造所/煉瓦構造について
2 赤煉瓦庁舎と復原改修工事
 北海道庁旧本庁舎(道庁赤煉瓦庁舎)/昭和四十三年の復原修理/中央ドーム/復原ディテール/スレート屋根/開拓使本庁舎と赤煉瓦広場
3 石造建築考
 札幌の石造建築/石材の搬出路/軟石と硬石
4 旧札幌控訴院
 旧札幌控訴院庁舎(札幌市資料館)/控訴院の建築あれこれ/鉄筋コンクリート構造の導入/組積造から鉄筋コンクリート造の時代へ/日本建築のなかの石材
5 建築史のなかの石材
 安山岩と玄武岩の建築/石灰岩の建築/砂岩の建築

Ⅴ エピローグ[現代建築への入口]
1 札幌が誇る現代建築
 札幌パークホテルの見学会/旧ホテル三愛の建築/建築家坂倉準三
2 現代建築への入口の時代
 現代建築の課題/札幌の現代建築と一九六〇年代


索 引

あとがきにかえて─越野武先生を偲んで 角 幸博

前書きなど

ご遺作となった本書の企画は、一昨年暮れに先生から私に原稿を持ち込む出版社の相談があり、昔からの知り合いである亜璃西社を紹介させてもらった。その後、先生と亜璃西社とで打ち合わせが行われ、先生が持ち込んだ原稿が大部だったこともあり、亜璃西社からは札幌の建築追想パートだけを出版し、残りの原稿は私家版に収録することになったとうかがっていた。
昨年五月、書籍化用に先生が整理されたワープロ原稿が、亜璃西社から私のもとに持ち込まれた。拝読したところ、建築史家としての専門的研究内容が、やわらかい語り口でかみ砕いてつづられているうえ、先生が経験されてきた札幌の建築にまつわる貴重なエピソードも多く含まれ、一般読者の知的好奇心を満足させるものに仕上がっていることから、ぜひとも出版すべきと伝えた。
先生のお心積もりでは、昨年秋ごろに発刊する予定で、我々も出版記念会を企画していたのだが、出版社の都合で延びに延びて本年の刊行となっていた。こうした経緯もあり、先生のご逝去で本書の刊行を中断するのはあまりにも惜しいと考えた関係者の意向から、弟子の私と孫弟子の角かく哲さとる君とで、発刊に向けての校正作業や不足写真の追加などをお手伝いさせていただくことで、今回の出版にいたったのである。
(「あとがきにかえて─越野武先生を偲んで 角 幸博」より)

著者プロフィール

越野 武(こしの・たけし)
昭和12年(1937)年札幌生まれ。昭和35年北海道大学工学部卒業。山下寿郎設計事務所を経て、昭和37年から北海道大学工学部建築工学科助手。助教授を経て平成2年(1990)年教授。平成13年定年退職し名誉教授となり、同年札幌大学文化学部教授に就任。平成20年札幌大学定年退職。著書に『開化のかたち 日本の建築明治・大正・昭和1』(三省堂、1979)、『歴史の町なみ 北海道・東北編』(共著、日本放送出版協会、1980)、『北海道における初期洋風建築の研究』(北海道大学図書刊行会、1993、日本建築学会賞受賞)、『風と大地と 世界建築老眼記』(新宿書房、2008)など。翻訳にニコラス・ペヴスナー著『建築タイプの歴史Ⅰ 国家と偉人の記念碑から刑務所まで』(中央公論美術出版、2014)、『建築タイプの歴史Ⅱ ホテルから工場まで』(中央公論美術出版、2015)。平成19年「札幌市市政功労」受賞。令和6年(2024)8月10日死去、享年87。同年9月6日「従四位瑞宝小綬章」叙勲。